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サロン21

江戸時代を考える

1.江戸時代をどう評価するのか

 戦乱に明け暮れた戦国時代には抜群の精度を誇る鉄砲技術を持ち、軍事強国だった日本だが、安定した徳川の治世を通じて武器や軍艦の製造を禁止してきた。その結果、幕末にはこの間に軍事力を増強した欧米の軍事・経済進出に抗する術を失っていた。
 不平等条約の締結を余儀なくされ、明治以降には拙速なまでの西欧化、近代化の道を歩むことになった。

 江戸時代とは、世界でも最高レベルの文化や識字率を誇り、平和と治安の良さを謳歌した明るい時代か、
 それとも貿易・渡航を厳しく管理して世界の科学・軍事技術の発展に後れをとった、閉ざされた暗い時代か。
 現在の日本を取り巻く環境が厳しさを増す中で、江戸時代から何を学ぶべきかが問われている。

2.江戸時代の特長
  1. ①江戸時代は安定と成熟の時代。
    人口は初期には1500万人程度、中期までには倍増し、その後は3000万人余りで安定していたと推定されている。
  2. ②理想的な循環型・持続可能型・自給自足社会を形成していた。
     都市の排泄物を農村に持ち帰り肥料とするなど有機的なシステムを作り上げていた。
     また、自然と人の住む集落の間に里山を設けて、自然を利用しながら自然と共生することも実現していた。
     豊富にはもののない時代で、あるもので満足し、奢侈を嫌う“足を知る”精神を支配階級である武士が率先垂範していた時代でもあった。
     豊富に産出する金・銀・銅を用いて、絹他のアジアの産品、欧州の最新の出版物などを輸入していたが、基本的には自給自足経済。
  3. ③治安が良く平和な時代だった。
     二百六十五年の治世を通じて海外進出を行ったことはなく、江戸後期になって南下してくるロシアの艦船に悩まされるまでは外国からの脅威を覚えることもなかった。
     国内でも戦乱は皆無で、百姓一揆も代表者は重罪に処せられたが、領主にも領地没収などの裁きが下され、民衆は公儀の公正な裁きに一定の信頼を寄せていた。
     治安が良く婦人だけで旅ができた。全国の人口が3千万だった時代に、伊勢神宮への年間の参拝客が5百万人を数えたという驚くべき数字も残っている。
     戦国末期から江戸の初期までは鉄砲の高い精度を誇る世界有数の軍事強国だった。秀吉は明・天竺までの制覇を夢に見、家光も明への派兵を検討していた。
     しかし、その後は治安維持を優先して、兵器や軍艦の製造を制限した。
  4. ④職分ごとの役割の尊重
     公家・僧侶・武士と町民・農民の区別はあったが、それぞれの職分に応じた役割を自覚していた。(天皇にも禁中諸法度にて役割が与えられていた)。
     同時に職分を超えた交友があった。
     武士の本分は家を守ることにあった。
     家の後継者は血縁に拘らずに家長に相応しい人材を選んだ。
     村の自治組織が江戸幕府の組織の原型となっている。
     公論衆議が重んぜられ、五カ条の御誓文の第一条の「万機公論に決すべし」につながっている。
  5. ⑤国民宗教の確立と町民文化の広がり
     現存する町村の四分の三は戦国時代までに成立しており、共同体の自治に基づく国民国家が形成され、江戸時代には寺と神社仏閣が全国に整って国民的宗教が確立した。檀家制度が確立し、個人は仏教に帰依し、家や村などの集団・共同体は神社で祀る枠組みは身分の上下を問わず浸透した(皇室から農民まで)。
     清、朝鮮、長崎のオランダ商館などを通じて先進文化を吸収しつつ、伝統の遊芸・武芸は一般民衆の間にも広く普及し、また、浮世絵は欧州美術界に強い影響を与えてもいた。
     江戸時代の後期には全国に二万を越える寺小屋が開設されて、識字率は五割前後に達していたと推定され、世界最高の水準にあった。
  6. ⑥欧米人が驚愕した日本の文化レベル
     渡辺京二氏の「逝きし世の面影」などによると、幕末から明治初期の海外からの来訪者の殆どは、特権階級である武士が奢侈を求めず、庶民と同じ質素な生活を送っていることに驚嘆しつつ、町民や農民の礼儀正しさ、屈託のない明るさなどに感銘している。
     オーストリア帝国の宰相メッテルニッヒの腹心でもあった外交官アレクサンダー・ヒューブナーは明治の初頭に来日して旅行記を残しているが、目にする光景が余りにも美しく、また、農民、町民がみな明るく楽しげにしている様子などから、「日本にやって来た者は誰しもがわが目を疑う、歩みを進めるごとにこれは夢ではないか、御伽噺ではないか・・・・・」
     とまで驚愕し、次いで賞賛している。
3.日本を取り巻く諸問題:

 経済成長は引き続き追い求めるのか。→成長を放棄すれば、日本企業は埋没するのではないか。
 持続可能社会を本気で目指すのか。→国際競争に負けて日本経済は埋没しないか。
 日本の歴史や文化を守るのか。→独立を維持できることが前提。
 個人の権利と自由をどこまで尊重するのか→家・家族は崩壊してよいのか、公益に尽くす気概は失われてよいのか。
 成果主義・効率主義はどこまで尊重されるべきか→役割分担して成果を共有できないのか。
 中韓のネガティブキャンペーンにどう対処するのか。→戦後一貫して譲歩を続けてきている。
 中韓の領土進出にどう対応するのか。→譲歩してもさらなる要求を引き出すだけか。
 軍事強化は行うのか、集団的自衛権は是か非か、武器輸出は是か非か→ 一国平和主義は現実的か。
 核武装は放棄するのか。→国の安全・自立は保てるのか。
 核技術は放棄するのか。→困難な問題から逃げ、他国に委ねることで解決するのか。

以上

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