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サロン21

「江戸時代を考える」

A.配信済みの資料に基づき、森田より30分間にわたって、下記に沿っての問題提起があった。

  1. 江戸時代をどう評価するのか
     江戸時代とは、世界でも最高レベルの文化や識字率を誇り、平和と治安の良さを謳歌した明るい時代か、
     それとも貿易・渡航を厳しく管理して世界の科学・軍事技術の発展に後れをとった、閉ざされた暗い時代と評価すべきなのか。
  2. 江戸時代の特長
    1. ①江戸時代は安定と成熟の時代。人口は初期には1500万人程度、中期までには倍増し、その後は3000万人余りで安定していたと推定されている。
    2. ②理想的な循環型・持続可能型・自給自足社会を形成していた。
    3. ③治安が良く平和な時代だった。
    4. ④職分ごとの役割の尊重(公家・僧侶・武士と町民・農民の区別はあったが、それぞれの職分に応じた役割を自覚していた。)
    5. ⑤国民宗教の確立と町民文化の広がり(神社仏閣の普及)
    6. ⑥欧米人が驚愕した日本の高い文化レベルと農民・町民の屈託のない明るさ。
  3. 日本を取り巻く諸問題:
    さまざまな厳しい国際環境に取り巻かれている現代の日本は、江戸時代の経験から何を学ぶべきなのか。

B.引き続き自由討議に入り、参会者から下記のごとき意見が出された。
中期から後期にかけての人口は3千万人前後で安定、米の生産額もほぼ一定だったが、所得は1.3倍に増え生活に余裕ができたのではないか。
日本の特色である森を守る文化は江戸時代にも守られた。
外国人旅行者は農民・町民の明るさに驚いているが、イサべラ・バードは東北地方の貧しい農村を描写している。
百姓一揆は比較的少なかったと言えるが、東北や四国など地方によっては飢饉に苦しんだ。
藩の間での融通がきかずに被害が拡大した面もある。
百姓一揆は支配者に対する抵抗というよりも農民同士の勝ち組、負け組の争いという側面もある。
江戸時代は現代の北朝鮮と同様に農民が困窮した時代だ。

シーボルト、シュリーマン、モース、ベルツなどなどの旅行記を見ると治安の良さ、清潔さ、民芸のレベルの高さ、農民の屈託のなさなどに驚いている。
ザビエルは、日本の文化レベルは高く、未開国向けの手法ではキリスト教の普及はできない。科学技術に関心が高いので、紹介すべきだと述べている。

江戸時代の最大のメリットは国内外の平和。
比較的平等な社会で教育がよかった。
江戸の持続可能な循環型社会をよく勉強して、これからも追及して行くべきだ。
灘・伏見の酒を詰めて江戸に運んだ樽に醤油を詰めて、さらにその後に油の運搬に使うなど樽が無駄なく回転するシステムが出来上がっていた。これはアルミのリサイクル率が世界最高という形で現代に引き継がれている。
今はやりのリサイクル、リユース、リヂュースの原型はすべて江戸にある。
近現代は物質中心の文明を追いかけてきたが、江戸の精神文化の充実を見習うべきだ。
江戸時代に花開いた伝統文化を今後どう守っていくのか。
識字率は高く、多くの農民が契約書を読み書きしていたことが農村に残る多数の古文書から分かる。
表意文字は識字率が高い?
欧州と同様レベルの経済が江戸時代にはあった。商業資本が発達し、世界最初の先物取引まであった。
現代の連結決算に比肩できるほどの複式簿記があった。

文化・経済が発達し平和を謳歌したのに、なぜ幕末には欧米の進出に慌てふためくことになったのか。
武士は国防をなぜ果たせなかったのか。
欧米の進出の脅威についての情報はあったが、的確な対応ができなかった。
幕閣が不都合な真実に向き合わなかった。
平和呆けをしていた。
人を外地に派遣するなどして情報の真偽を確かめるべきところを、そうした行動を怠った。
林子平が早くに国防の不備を指摘していたのに無視した。
士族の使命が国防から内政に変わっていた。
国防の方法論であった筈の鎖国が目的化してしまっていた。
問題の発生を未然に防ぐシステムは日本では評価されないきらいがある。
五十年、百年の大計がない。
外人・外国を疑わない性癖がある。
日本の立ち位置を客観的に見極めることが不得意。
吉宗のような優れた将軍が幕末にいれば対応は変わっていた。
幕府の合議制は是とするも、危機に対応ができなかった。

江戸時代は平和な時代だった。貧しかったが、日本の歴史上一番良い時代だった。
稲中心の村社会のDNAは今も残っている。
この十年、日本文化の見直しは進んできている。今後も教育が大事だ。

3.幕末から明治の初期に日本を訪れた多くの欧米人が驚嘆するほどのはつらつとした社会を作り上げていた江戸時代だったが、欧米の軍事進出になぜ慌てふためくことになったのか。さまざまな意見が出された。現代人は江戸の経験から学ぶべきことが多く、折に触れてこの問題を継続して考えていくことで意見は一致した。

以上

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