「1000兆円の借金を恐れるな!」
平成26年10月21日
1. 最初に鳥海さんより、某銀行の調査月報に寄稿された論文に基づき、順調に滑り出したアベノミクスの金融・財政政策の効果、これからが本番の第三の矢である成長戦略はその成果を期して待っている段階である旨の説明がありました。
さらに、戦後の日本経済の歩み、財政・金融政策の推移、いかにして公的累積債務が1000兆円の巨額に達するに至ったかについて、図表とデータを用いた懇切な説明がありました。
最後に、ここ数年にわたって日本経済全体に蔓延する閉塞感を打破する為に、その根っこにある財政赤字と巨大な累積債務を取り除く方法として、さまざまな手法を用いて“債務のエクイティー化または隔離”を図り、債務を見えにくくしてしまうという大胆な政策を提言されました。
2.上記の提言を受けて、出席者12名による自由な討議に入り、下記のような意見が出された。
日本経済は戦後一貫しての円高に象徴されるように世界から評価されてきているし、現在も米国に次ぐ実力を堅持している。もっと、自信を持ってよいのではないか。
海外純資産は400兆円近くあり、世界最大でもある。こんなに稼いでいる国はほかにない。
「期待」というのは経済学の新概念になっているが、日本経済には、「悲観」でなく「期待」が必要。
アベノミクスは第4の矢として公的債務という宿痾の除去を異次元の処方をもちいてでもやるべきである。
将来に向けては「期待」が大事で、借金の雪だるまは横に置いておくべきだ。
しかし、その場凌ぎは課題の先送りに過ぎず、結局、解決にならない。大きな問題は構造から直さないといけない
公的累積債務をエクイティー化したとしても、財政赤字の体質を糺さねば、問題は解決しないのではないか。
1000兆円の借金はやはり怖い。孫子に負担させたくない。
借金は、そんなに安易にゼロにしていいものではない。
世代として常にバランスを取るべきだ。
永久国債などの仕組みで公的債務の潜在化を図っても、パニックにおびえて暮らすことにならないか。
日本の公的債務のGDP比率が200%を超えているが、他の先進国も100%程度である。どこまでなら健全という理論的根拠はないのではないか。
現在の借金を隠しても、歳入不足問題は残る。歳入増大策は、真剣に考えるべきだ。
国に巨額の借金がありながらも現状回っていることは幸いだ。しかし、40兆円にも上る社会保障関連費のギャップは保険料を上げて埋めるべきだ。
税金は、国は返さない、一方、国債は、国は返済する必要がある。現在は税を比較的低く抑えているが、税金と国債のバランスも考えていく必要がある。
「固定資産税」があるのだから「流動資産税」だってあっていい。
国際標準から考えて、消費税率アップはやむを得ない。
消費税収が今の3倍になれば、社会保障費は全部賄える。
日本の国債は大部分が日本国内で消費されているので、安全と言われるが、外資系株主の影響を受けることはないのか。
成長至上主義は必ず行き詰る。公的債務の増大は必然の結果だ。
税金の使われ方が正確に国民には伝わって来ない。どうも政府(官僚)は信用ならない。
米国から本当の意味で独立する必要がある。国益を優先した制度、心構え、政策をとる必要がある。そのためには安定した強力な政権が必要。
北欧の国々は高福祉・高負担。老後の心配はないが、国民負担率は7割に達して、自由になるお金は3割しか残らない。
公共支出を15兆円程度から、近年は6-7兆円レベルまで急減させたが、こういう時期だからこそ民間投資の呼び水となるような公共投資を増やすべきではないか。
しかし、公共投資の乗数効果は少なくなってきている。
3.公的債務を何らかの異次元処方で棚上げして、将来への「期待」を回復すべしという大胆な提言に対しては驚き、安心などこもごもの反応があった。借金は地道にしっかりと努力して返済すべしという意見も多数あった。しかし、悲観的になりがちな昨今の情勢からすれば、何らかの異次元の対策が求められていることも確かだ。
以上