作品の閲覧

サロン21

「魅力あるJAPANを創る」
-景観の構造改革

2015年2月 文責:西川武彦

①ちょっと気になる言葉:
  • 石井幹子女史(世界的な照明デザイナー)の嘆き
    「日本人は身の回り十メートルだけしかみえない」
②景観問題の個人的背景:
  • 小学校時代の風景→疎開先の長瀞と里山→近江八幡と湖畔の本家→「うさぎ追いしあの山小鮒釣りしかの川…」
  • 中学時代の風景→赤岳登山→八ヶ岳はどこの山?→富士川はどこの川?→卒論で道州制にチャレンジ
  • 国際派時代の風景→世界諸国の自然と景観→帰国後の景観ショック→電柱が並ぶ狭い街路・車と人様が同居→広告・看板・電線の氾濫
  • そして今→ナショナルトラスト活動に参画→町づくり計画策定に参画→別荘村の「景観お守り隊」長→地元行政と提携→景観条例に沿って看板・広告・標識を規制
③日本の景観問題 ―時代の流れと景観の変遷
・明治維新まで:
幕藩体制の下、人の流れは限定→地域夫々の風習・伝統・自然景観を維持→訪日外国人への好印象
・以降終戦まで:
脱亜入欧・富国強兵→廃藩置県・新府県制度の下、日本型産業革命を走る→先進国入りするが暴走して破滅→地域夫々の風習・伝統・自然景観などは概ね維持されたが、一部破壊も→行政によりあらゆる施設に基準(道路・建築・鉄道・電気施設等)→戦火で都市が焼失
・高度成長時代:
都市再興計画の欠如・焼け跡に建物が無規制に乱立→官民協調で高度経済成長→景観・環境汚染と同居→大都市圏へ人口集中→地方の過疎化→一次産業の弱小化→日本列島改造路線で一律に景観環境破壊→醜悪な看板・広告・標識がほぼ無規制で横並び的に国中に溢れる→電化拡大で電柱・電線がほぼ無規制で乱立→「一億総白痴化」→悪平等教育路線で、横並び好き・無個性・凡庸な「中流」社会の誕生→「自分だけ大事」人間を大量生産→自分の家だけで、外はかまわぬ→全国的高速道網で各ICから町までの国道沿い新興地が最悪(建物・看板・広告・標識・電柱・電線等)e.g. モデル悪景観→諏訪、御殿場、韮崎など
・バブル崩壊後:
高度成長の終盤から環境・景観問題が漸次クローズアップ→景観条例などが大小の行政区画単位で徐々に設定→拘束力に欠け民度低い地域では難航→大都市の中心部などでは建物の高層大型ビル化、道路改修などに伴ない電柱・電線の地下化が進み景観が限定的に改善→住宅街は旧態然→歴史文化的重要景観観・建物などの保全が各地で徐に進んでいる→(歌舞伎町、シモキタ、下町など)日本らしい猥雑性・複雑系の美学がクール・ジャパンとして評価も→全国展開の大型店の醜悪な看板が激増
④これからの日本はどうなる -景観問題の社会的背景

 5年後の東京オリンピックまでに諸般の激動があるとは考えられないが、仮に2050年の日本を景観の構造改革の視点から想定すれば、

・少子高齢化と人口は→
人口は9500万?団塊の世代は昇天?
65歳以上が40%?
・訪日外国人の漸増は→
2014年1300万達成、2020年に2000万?
2050年には3000万?
・電力問題は→
脱原発?原発なしの電力エネルギー供給?
・日本の自然環境は→
四季温暖で緑溢れる・海山川は変わらない
・日本の資源は→
第一次産業は?限界集落・農林業の復活?
・人口構成変化と住宅地の変貌→
大都市郊外の人口減と再開発?
・高成長時代のインフラは→
建物・道路など老朽化で改修、新造、取り壊し?景観を重視した再構築?
・IT・ウエブ等の進化→
ナビなどで看板・標識・広告類の価値激減
・国のあるべきかたち→
GNP指標の経済成長より自然・東西融合の類稀な固有文化を大事に成熟社会を志向?
・景観のかたち→
オシャレ感覚で景観を再生?景観環境のガラパゴス化が進む?清濁棲み分け?
⑤これからの景観をどうする ―広告看板・幟・標識、電柱・電線・変圧器などを中心に

 国の施政方針に以下を明記することを提案する:「景観の構造改革」

  • 風景は公共財である。日本固有の自然景観環境を最大限活かし、伝統文化を尊重し、近景だけでなく、中景、遠景、背景、眺望・借景を大事にして景観の構造改革を進め、おもてなしの心を備えた美しいJAPANを創る
  • 全国一律で、地域に見合った景観条例の制定を義務づける
  • 全国一律で、市街地の電線・電柱・変圧器などの地下化を法令化するそのための財源を確保する
  • 道州制を含む行政区画見直しは、景観的同質性の視点を重視する
⑥そして自分なりに行動を!
  • 景観環境保全運動・活動へのボランテイア参画・寄付・寄贈など!
  • 皆さんの故郷(ふるさと)の景観環境を守るため、自分なりに行動を! 以上

筆者略歴:
1937年東京生まれ、ICU教養学部社会科学科卒
日本航空で主に国際線畑を歩く(国際線営業開発・乗り入れ交渉など)、同社能力開発部長、㈱ウインズ出版社長(機内誌など制作)を経て退職
現在は、「企業OBペンクラブ」会長、「ロングステイ財団」評議員・広報委員長、「日本ナショナルトラスト協会」フレンズクラブ代表など
景観づくり講演会「景観の構造改革―オシャレ感覚で街を創りませんか?」(平成14年・長野県富士見町)
米欧亜回覧の会・グローバルジャパン研究会「景観の構造改革」(平成25年)

参考文献:
「日本の景観」樋口忠彦(ちくま学芸文庫)
「街並みの美学」芦原義信(岩波・同時代ライブラリー)
「東京の美学」芦原義信(岩波新書)
「風景学入門」中村良夫(中公新書)
「戦後日本が失ったもの」東郷和彦(角川Oneテーマ21)
「日本 町の風景学」内藤 昌(草思社)
「新・町並み時代」全国町並み保存連盟編著(学芸出版社)
「ニッポン景観論」アレックス・カー(集英社新書ヴィジュアル版)

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧