サロン21 討論メモ 「最近の景気循環の変貌と経済発展・衰退段階論との接点」
平成28年03月15日
〔1〕.当月は、「景気循環予測システム研究会」を主宰されている山縣正靖さんに、配信済みのレジメに添いながら、頭書についての見解を披歴いただきました。
近年は日本のみならず米国の景気循環も従来のパターンとは相違してきており、局面を打開するには下記のような対策が必要ではないかとのご説明をいただきました。
記
再生戦略の模索
今 日本は現在の苦境(日本病?)から脱出し再生する戦略を模索している。早々と打ち出された新三本の矢はどの項目も重要であるが、それらを実現するためにも日本衰退化の根本原因を直視して、それらに打ち克つ戦略を打ち出すことが望まれる。
- (1)そもそもの原因は価格競争に敗れて国内設備投資が増えないことである。これに対しては、価格競争力の奪回を目指す設備投資を増やす。企業の投資環境を整える。
- (2)国内の製造現場に元気がなく、製品開発力まで劣後し始めている。これに対しては改めて製品開発をしやすい環境をととのえ、技術開発投資、設備投資を増強する。
- (3)国内に残って苦闘している中小企業、高齢化産業を再生する戦略、合理化投資を推し進める。ファイナンス、販売経路も援助する。
これらの挑戦はライバル国の技術を追い抜くのであるから並大抵のものではない。生産技術研究所、理化学研究所、各大学の工学部は是非参加して頂きたいし、科学技術予算もこの分野に集中するべきであろう。技術立国とはこの挑戦に尽きるのではないか
〔2〕.出席者12名より下記のような意見が出された。
通産省発表の稼働率を見ても、ここ数年100%前後で、従来の循環なら上昇する筈の、景気も稼働率も上昇しない。
循環論は、いわば、真空状態での科学理論に似ており、外部要因の影響の方が大きいのではないか。
過去にも戦争などが、景気変動に大きく作用してきた。→米国は軍需を止められない。
欧州は衰退期、中国は景気循環の下降局面と言えるのではないか。
ROE理論による過度の株主優待はおかしい、設備投資よりも株主の利益を優先している。
技術や産業の陳腐化は避けられないが、繊維産業のように民間企業は変わって行く、変わらないは政府だ。
国内の設備は陳腐化しているが、海外に投資し、企業は利益を上げ、国内に還元されている。日本には困窮している人はいないし、悲観することはないのではないか。
企業は国家とは違うので、どこで稼いでもかまわない。
企業の海外進出は結構だが、国内空洞化は防がねばならない。国内がしっかりしていないと、海外も続かない。
創業以来の最高益を出している企業が200社もある一方では、東芝やシャープの例もあるが、これは企業の優勝劣敗でやむを得ない。
需要の停滞に備えて、政府の後押しで企業の再編が行われている。
コストダウン研究や製品開発研究も政府後押しで行うべきだ。
コストダウンについては社内外に抵抗勢力がいる。
かつて日立などは、同じテーマを複数の部署で研究させて競わせていた。
ドイツには産学協同はあっても、産官学共同はない。
ドイツは、コストダウンはトップがやり、日本のように現場に任せることはしない。
デフレ対策としては、金をばら撒くのが最も効果的だ。
日本の現状は、停滞ではなくて、高原状態ではないか。
中国は安い労働力で外貨を稼いできたが、今や東南アジアに企業はシフトしている。
3K分野などサービス業の給与が低く、金の分配がおかしいのではないか。
今や、GDPの過半はサービス業で、この分野の改善は必須である。
老人は海外に移住すればよい。→一時期はやったが、帰ってきている人が多いようだ。
貧しさを知らない若者世代はダレているのではないか。
会計法など米国式の経営システムを入れ過ぎたのではないか、グローバリズムの弊害にしっかり対処する必要がある。
ファンドマネーが株価を左右し、景気の動向にも大きな影響を与える、惑わされない対策が必要だ。
日本経済の発展段階に応じて企業が変化するのは当然だ、ただ、利益の配分を丁寧に行う必要がある。
日本には素材産業など、独自の技術を開発している企業が多数ある。
民間は技術を磨き、オンリーワン企業を目指すべきだ。
以上