サロン21 討論メモ 「飢餓が歴史を変える」
平成28年9月20日
〔1〕.当月は、羽田さんよりご紹介の農学博士で味の素、AGFなどに勤務しておられた浅井壮一郎さんにお越しいただき、「飢餓が歴史を変える」と云うテーマで講演いただきました。戦争の主原因は飢餓であり、その解決は食料増産か、侵略・略奪によるしかなく、古来、戦争が絶えなかった歴史をご説明願いました。講演の趣旨は以下の通りです。
『戦争の主原因は飢餓である。フランス革命は、飢えた国民を軍隊に吸収し、他国を侵略し、他国の犠牲において食わしたに過ぎない。イスラムのジハード(聖戦)然りである。一方、食料増産には鉄製農具が重要な役割を果たした。産業革命は農業革命に支えられた。「穀物⇒クローバー⇒砂糖大根⇒穀物の輪作とジャガイモ」「畝と鉄製犂の中国式農法の伝来」であった。後者は中国で戦国時代に開発されたものである。鉄製武器・鉄製農具の使用は紀元前12世紀のヒッタイト滅亡後にはじまる。ヒッタイトは鉄の王国ではなく、武器は青銅だった。このように歴史には誤りが多い。その誤解の一つとして古代製鉄伝搬(ビッグバン)と古代製鉄原料について考察する』
また、アナトリア半島のキッズワトナで鉄の製錬技術が紀元前12世紀に生まれ、またたく間に各地に伝播し、鉄製農具開発→食料増産→古代王国の誕生につながったと云う“鉄のビッグバン” 説もご披露いただきました。
〔2〕.続いて出席者11名による自由な討議に移り、下記のような意見が出された。
戦争の原因はさまざまであり、時代と共に変化するのではないか、
戦争の原因は、現代では飢餓よりも格差が重要ではないか、
戦争利得者が戦争を煽るのではないか、
古代において、鉄製の武器は威力を発揮したのは間違いないが、勝敗を決したのは、むしろ情報力ではないか。
鉄の技術はそんなに短期間に伝搬したのか?
アナトリア半島以外の地域で鉄の精錬技術が生まれた可能性はないのか?
出雲のたたらは、極めて良質の鉄ができるが、世界に類似のものがない独特の精錬技術である。
古代では天候の予測が重要であり、巫女的な存在が力を持ったのではないか、
人類の歴史は武力と神(巫女)の二頭政治だった。
鉄製農具により農業増産が実現し、人口の増加、官僚体制の整備が進んだ。
産業革命も農業増産により余剰人員ができ、産業革命につながった。
以上