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サロン21

サロン21 討論メモ 「日本の財政の現状と課題」

平成29年5月16日

〔1〕当月は、財務省関東財務局の川瀬総務部長と鈴木職員にお越しいただき、関東財務局の概要を御紹介いただいた後に、頭書の課題についてお話いただいた。財務省発行の財政関係資料とご自身で纏めていただいた資料を基に財政の現状を分かりやすくご説明いただいた。更に少子高齢化に伴い社会保障費が急増する一方で、税収の伸びが滞り、財政赤字が止まらない現状を詳細に、川瀬部長の私見も交えて、ご説明いただいた。
 また、財政健全化の目標が、国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)について
①2015年度までに2010年度に比べて赤字の対GDP比率を半減する(達成見込み)
②2020年度までに黒字化する
③その後の債務残高対GDP比の安定的引き下げ
にあり、プライマリーバランスを取り戻すことが最重要である点を御説明いただいた。

〔2〕引き続いて出席者12名による質疑応答と自由な討論が行われ、下記のような意見が出た。

  • 医療費・介護費用などは75歳以上になると急増するので、団塊の世代が75歳以上になる2025年以降に社会保障費が更に急増する懸念がある。
  • 日本の国民負担率(社会保障負担と税負担の合計)は比較的低い方だが、負担の高い北欧各国で近年高い経済成長が達成されている。
  • 財政規律を維持しながら比較的高い成長率を達成しているドイツは手本になる。
  • 財政が悪化すると、財政出動などは難しくなるが、日常生活では具体的にどんな支障が出るのか。
  • 日本の国債は90%が国内で保有されており、暴落の恐れは少ない。ただし、取引高でみると25%が海外保有者によるもので、特に先物取引では50%が海外勢である。
  • 日本の国際経常収支は黒字を確保しており、海外純資産も豊富で、まだ経済の強さを保っているので、過去の他国の財政危機のケースと異なる→とはいえ、財政規律を緩めていいわけではない。
  • 近年は新興国の追い上げも厳しく、日本経済の競争力もかつてほど圧倒的ではない。稼ぐ力が弱くなった時に日本への信認は続くのか。
  • 働き方改革で、働き過ぎが叩かれているが、働くことを罪悪視すると経済の破綻につながる恐れがあるのではないか。
  • 国の資産は財務省資料でも670兆円あり、国の負債は1200兆円ではなくて、純負債530兆円との見方もできる。
  • 特別会計の中身が良く分からない。国民に隠しているのではないか。→近年わかりやすく整理されてきている。原則的には自己完結型の会計が多く、財政全体の足を引っ張る懸念は少ない。
  • 黒田総裁による異次元緩和政策は不安である。2%のインフレ目標はまだ達成されていない。その理論は「期待」を基にしている。毎年の80兆円の国債買い入れで市場が機能しなくなっている。前総裁はしっかりと財政規律を守った運営をして安心感があった。
    しかし、異次元緩和によりデフレに歯止めがかかり、企業収益の改善、賃金の上昇などの大きな成果があったのではないか。
  • 財政の立て直しには、不人気政策を遂行する政治家の決断が必要。
  • 役人の責任は最悪の事態に備えることにある。
  • バブルやリーマンショックの後に、補助金の大量交付などで箱ものなどを建設したが、今は維持や改修が負担になっている。景気浮揚の為の財政出動は必要だが、その中身が問われる。
  • 過日のADB会議にはアジアから6千人が参加した。戦後、欧州はアフリカ諸国に補助金などを与えたが根付かなかった。しかし、日本はアジア各国に円借款で協力し、結果的には実効を挙げたプロジェクトが多い。

以上

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