サロン21 討論メモ 「社会政策は社会政治」
平成29年6月20日
〔1〕当月は、上智大学総合人間学部 学部長の栃本一三郎教授にお越しいただき、「社会政策は社会政治」と題して、介護の実情などをにらみながら社会政策のあり方と政治の果たすべき役割についてお話を伺いました。
社会保障費の負担は、歴史的経緯もあって、税と保険の組み合わせであること、
政策決定における政府・与党・官庁の関わり方、
今後の社会保障のあるべき方向性
などについて、欧州の実情を参考にしながらのご説明があった。
〔2〕引き続いて出席者12名による質疑応答と自由な討論が行われ、下記のような意見が出た。
- 今回の消費増税の延期は、政治的判断でなされたが、税と社会保障の一体改革の構想を台無しにした。
- そもそも消費増税が経済にマイナスだという論拠は希薄だ。→しかし、先の消費増税の実施が経済回復を失速させたとの見方が多数説だ。増税延期は政権維持の為というよりも、景気回復とそれに伴う税収増を優先したのではないか。
- 欧州の実例からすると、国民負担率の高い国ほど、逆に経済成長率が高くなる傾向がある。
- 介護費用は10兆円、文教科学振興費、防衛費などは5兆円強であり、介護費用は既に巨額になっている。
- ただ、社会保障費関連の収支はバランスが取れており、社会保障費が財政悪化の原因とする見方は正しくない。→しかし、社会保障費関連の税負担は急激に増え続けている。
- 介護を必要としない人にまで介護が提供されている。そうした無駄を排除して行かないと介護制度は維持できなくなる→介護向け費用を削る前に、他の無駄を削ってほしい。
- 健康に留意し健康を維持している人と、そうでない人を一派一絡げにして一体化すべきではない
- 介護も弱者保護も、むやみに保護するのではなく、自立の促進を基本とすべきだ。
- こども保険は慎重に検討すべきだ。安易な無料化は無責任に陥りやすい。
- 現内閣は強力で政治主導が実現しているが、内閣府と既存官庁との二元関係ができるという弊害も生まれている。
- かつては専門分野の知識と経験が豊富な“族議員”が上手にコントロールしていたが、近年は経験の乏しい議員や大臣が多く、諮問委員などに左右されやすくなっている。
- 本来は財政社会学が基礎となるべきだが、現在は逆に経済学が上位にある。
- 経済学が劣化している。政治と経済を一体とした学部や学問の再建が必要ではないか。
- 欧州ではすでに、弱者を排除しないソーシャル・インクルージョンの政策に移行しつつある。
- 新三本の矢のうち二本は子育て支援と安心につながる社会保障である。→将来への不安が出生率の低下、消費の伸び悩みに現れている。不安の解消が経済成長にもつながる筈だ。
- 政府は50年後に人口1億、出生率1.8などの目標を掲げているが、実現は難しい。
以上