成長率は何故こんなに低いのか? どうすれば改善できるか?
最近 日本でも米国でも 成長率が低いので、①何故 成長率がこんなに低いのか、②改善するにはどうしたら良いか、との議論が行われている。
これは国民にとって重要な話であり、まず諸議論を紹介するとともに小生の考えも申し述べたい。サロンにてディスカッション頂ければ幸いである。
- (1)
- 景気回復が感じられないのはなぜか
ローレンス サマーズ。ベン バーナンキ、ポール クルーグマン この長期停滞論争は米国の錚々たる経済学者による論争であるが、サマーズの論点を紹介する。
なぜ;サマーズ氏はIS.LM曲線の考案者である。低成長の原因もこの曲線を使って説明しているが、トランプ大統領を動かすような具体的な内容があれば良いと思う。何故 企業が国内投資を出来ないのか、これも研究してほしいものだ。
どうやって改善;米国の道路、空港、地元学校などの公共インフラの荒廃はひどい状態である。公共インフラの再建投資をおこなえ。 - (2)
- 平成はなぜ失敗したのか
野口 悠紀雄
何故;日本は最新産業の開発に失敗した。5GやIT産業など新しい成長力のある分野の開発で遅れをとったので、国全体の成長も低いのだ。
どうやって改善;1.労働力不足への対応。2.高齢化に伴う社会保障支出増大への対応、3.中国の台頭など世界経済の構造変化への対処。
4.AIなどの新しい技術への対処。5.これらを拒む既得権の打破。 - (3)
- デービット アトキンソン
アトキンソン氏は英国人で、鉄の女サッチャー夫人の改革や欧州各国の改革の試行錯誤を見てきた人である。こよなく日本、日本人を愛し、日本人なら改善できると提言している。
何故?;労働人口が増え、その人達が採用する生産性向上の新技術がある間は国は高成長する。しかし労働人口、新技術が頭打ちになると国の成長は鈍るものだ。日本の経営者は過去の成功体験にしがみついて日本のおかれている危機を認識していないのではないか。
どうやって改善?;(1)更なる生産性の向上を官,民、学挙げて取り組むことだ。日本人は能力もあり誠実に取り組む資質があるからやればできる。 (2)最低賃金引き上げるべきだ。現在 不当な低賃金によって儲けている企業、産業が目立つが、これで安住されたら日本は生産性向上競争で勝てないし、成長率も低いままである。ショック療法であるが最低賃金を引き上げるべきだ。 - (4)
- 現状は満足すべき状態だ。心配するな。
日米の政権の広報部門
現在は失業率は低下しているし、稀に見る長期間の成長が続いている。
今後もうまくやるから、心配しないで任せて下さい。 - (5)
- マネーを増やせば景気は良くなる。
成長しないのはマネーの供給が少ないからである。もっとマネーの供給を増やせ。
インフレターゲット論、インフレ期待の経済学
ヘリコプターマネー論
MMT理論 - (6)
- 小生の見解
最近の日本経済は景気上昇局面に入っているのに従来になく成長が低い企業の国内設備投資が伸びないからである。
何故設備投資が伸びないのか。企業は業績好調。金融も大緩和されているのに国内設備投資を増やそうとしない。企業にも事情があるわけで、各産業にヒヤリングすれば判るだろうが過去の大きな設備投資による供給力が需要を上廻る状態で、新たな投資はやりにくい、 -
- (1)コストが低く現地需要も見込める海外投資、手っ取り早く効果を見込めるM&A投資を優先し、国内投資を抑える。
- (2)近隣諸国ですでに供給過剰になっている国がダンピング輸出をしかけてくるので、こちらがあらたな投資をするのは難しい。
- さて、かって日本No1と謳われた我国がいまや低成長No1、日本病とまで揶揄されるにいたったのには先例がある。パックスブリタニカの英国が英国病、パックスアメリカーナの米国がビッグ3破綻寸前まで追い込まれた米国病である。
小生が尊敬する篠原三代平先生は、そのような先例を分析されたうえで経済大国の発展・衰退段階論にまとめ、そこに至るメカニズムも解説しておられた。いずれ日本も手を打たなければ衰退しますよとの警告である。小生はこの警告に賛成であるが、もう一つ付け加えたい。それは、経済大国に追いつけ、追い越せと頑張ってきた国が、発展段階になり絶頂段階になるころ世界市場の再配分、強奪を求める帝国主義国家に変身ることである。ヒットラーのナチスドイツ、スターリンのコミンテルンが先例であるが、中国もその様相を呈してきたのではないか。
日本は中国帝国主義に対抗するためにも成長性を高め、競争力を高めなければならない。具体的には、価格競争力を高める設備投資、中国などライバルの新製品を追い越す設備投資・開発投資、高齢化産業が中国などを追い越せる合理化投資をふやすことである。そのような努力を官学あげてサポートすることである。 これらの方法については皆さまの貴重な知見をいただけることを期待しております。