「成長率はなぜこんなに低いのか、どうすれば改善できるのか」
〔1〕6月は、山縣正靖さんに御専門の経済問題につき、頭書の掲題にてお話いただきました。
- ① 景気回復が感じられないのは何故か、
- ②平成はなぜ失敗したのか、
- ③日本人の勝算
- ④現状は満足すべき状態だ、心配するな、
- ⑤マネーを増やせば景気はよくなる、
などの諸説に関して、日米のエコノミストの分析や、インフレターゲット論、インフレ期待の経済学、ヘリコプターマネー論、MMT理論などさまざまな論点を御紹介いただき、さらに国内設備投資が伸びないのが最大の要因というご自身の分析についても御説明があった。
〔2〕引き続き、出席者8名から各自の考える改善策を述べ合うこととし、以下のような意見が出された。
- 事象を検討するには、さまざまな角度から見る必要がある。反対側から見てみることも効果的だが、これは故鳥海さんに教えられた。
- 低成長はこの程度で良いのではないか。
- 低成長では設備投資ができず、やがて競争力を失う。また、デフレ下では過去の借金の負担が年ごとに重くなり、経済や家計を圧迫する。
- ゼロ成長では、現状を維持できなくなる。2%程度の成長が必要というのが、一般的な見方だ。
- 先進国は押し並べて低成長だが、日本の成長率はその中でも極度に低い。ここが問題の焦点だ。
- 米国はITやエネルギー産業が成長を推進しているが、企業間格差は拡大している。
- 欧州も低成長に苦しんでいるが、ドイツなどではスペシャリティー分野で強みを発揮している。
また、北欧の健闘、高成長が目立っている。 - 日本は、過去20年はほぼゼロ成長で、不振が際立っている。経営者が短期の利益追求を要求され、リスクの伴う投資に慎重になっている。
- 我々の時代は成長と共に給料が上がったのに、今は低成長で給料も上がらない。低賃金、非正規雇用を放置していては成長につながらない。
- 一方では、若い人が高級車を乗り回している。格差が広がっている。
- 格差社会は日本には合わない。
- ジャパンディプレイは苦戦が続いている。政府主導で企業統合を行っても、的確・迅速な経営判断を実行していくことは難しい。
- 日本は、通信や半導体では後れをとったが、その為の基幹部品や素材では日本が圧倒的に優位に立っている。
- 5Gでは後れをとったが、6Gはチャンスがある。まき返してもらいたい。
- 6Gも難しいのではないか。日本は技術の応用・展開は得意だが、新しいものを開発するのは苦手だ。
- かつては、通信はNTTが世界をリードしていたが、今は影が薄くなっている。日本から出される論文の数もすっかり減ってしまった。
- 半導体は、かつては日本の得意分野だった。なぜ国際競争に負けたのか、半導体の歴史を振り返ってみると、日本の低成長の秘密も分かるのではないか。
- 日本の企業は海外投資ばかりで、国内に投資しない。
- 海外に基幹工場を移してしまうと、国内の研究開発も停滞する傾向がある。
- MRJの苦戦が続いている。戦略を誤り、結局、ボンバルディアの子会社になってしまうのではないか。
- 米国は移民が多い。新しいものを作り出すエネルギーがある。
- 日本の停滞の原因は富の偏在ではないか。経営者は賃上げをしないし、中間層が薄くなり消費が減退した。需要減を補うために政府は財政出動をすべきだ。
- 銀行の役割、特に地銀の役割が無くなってきている。
- 郵政は地方にいきわたっている重要な社会インフラだ。民営化する必要があったのか。
農協と合わせて効率化を図る手があるのではないか。 - 製造業中心のものの見方を変えて行く必要があるのではないか。ロボットの活用なども、まだ限定的で、もっと積極的な活用を図るべきだ。
- スマホで日割りの給料の前借りができるアプリも出てきている。世の中は急速に変わっている。
- 日本の企業の利益率は低い。米国では競争相手を買収して占有率を高めて利益を上げる。 日本では、利益率より、企業の継続が重要視されてきた。
- 日本は、過去30年に亘って、日米構造協議や年次改革要望書などを通じて、日本型の経営を放棄してきた。非正規雇用の急増、リストラの横行と技術の流失などは弊害の典型だ。日本型経営の功罪を見直し、原点に立ち返るべきだ。
また、道路、橋梁、港湾などのインフラを中心とした財政出動が、経済成長を促すために必須だ。 - 最低賃金は自然に決まるべきものだ。政府はそんなことより、需要不足を補う政策をすべきだ。
- 低成長とはいえ、現状で満足だ。中国とは、難しい課題だが、仲良くする方法を模索していきたい。
- 米国は中国共産党独裁、国家資本主義をターゲットにしている。米国をとるか、中国をとるかを各国に迫りながら、中国包囲網を形成しつつある。米中貿易摩擦は中途半端な妥協では終わらない。