作品の閲覧

サロン21

香港動乱と日本にできること

1.動乱の経緯
  1. ①香港の英国から中国への返還時(1997年)に英中間で基本合意した、“香港の高度の自治を認め、一国二制度を50年間守る”ことが次第に形骸化し、中国共産党による締め付けが強化されてきた。2014年には、不満を爆発させた若者が蜂起し、雨傘革命が起こったが、支持が広がらずに短期間で終息した。
  2. ②しかし、2019年4月に、香港政府が「容疑者引き渡し条約」の香港への適用を図り、議会にて法案の審議を開始した。これに対して、民主派の若者を中心とした激しい抗議デモが発生、6月16日の集会には主催者発表で二百万人が集まった。(香港の人口は、七百万人余り)
  3. ③香港政府は取締を強化、これに反発した市民は下記の5項目の要求を掲げるに至った。
    引き渡し条約の完全撤廃、
    市民活動を暴動とする見方の撤回、
    デモ参加者の逮捕や起訴の中止、
    警察の暴力的制圧の責任追及と外部調査の実施、
    現行政長官(香港政府のトップ)の辞任と民主的選挙の実施。
  4. ④香港政府は、民主派の勢いと毎週末ごとに繰り返されるデモに押されて、条約を一時凍結、さらには撤回したが、遅きに失し、若者を中心にした市民は路上や大学構内などで、5項目の完全実施を求めて反対運動を繰り返している。
    取り締まりに当たる警察は、催涙弾や実弾を使用するに至っており、死傷者の出る動乱といってよい事態となっている。半年に及ぶ動乱で、数千人の民主派市民・学生などが逮捕された模様。
    また、本土より人民解放軍が鎮圧に派遣されている。
  5. ⑤週末をベースにした抗議活動は半年以上に及び、観光やビジネスへの影響も大きく、経済もマイナス成長となってきた。市民の抵抗がいつまでもつのか、疑問とする見方も出てきた。
  6. ⑥そんな中で、11月24日に区議会選挙が行われ、8割以上を民主派が抑える圧勝で、香港市民が中共政府と香港政府への反対運動を支持していることが鮮明になった。
  7. ⑦香港政府は選挙結果を認めながら、五項目の要求には、改めてこれを拒否した。
    一方、米国では共和・民主両党の圧倒的な支持のもと「香港人権・民主主義法案」が成立、11月26日にはトランプ大統領が署名して正式に成立した。
    米中の対立が激しさを増す中で、今後の香港の動向が注目される。
2.動乱の背景
  1. ①条例の裏には、深圳、マカオ、香港を結び付けてビッグベイエリア(三つの通貨を持つ)とする計画がある。香港の特殊な地位を相対的に弱めるとともに、中国本土で実施済みの顔認証システムを導入し、香港を本土の監視社会の中に完全に巻き込もうとする狙いがある。
  2. ②本土の共産党幹部、資産家などが進出して不動産価格が暴騰、また子息を有名学校、企業などに優先的に送り込むなどして、自由競争を阻害している。
    英国統治時代の香港は、社会保障などは不十分だったが、自らの努力と工夫で金持ちになり、不動産も所有できるという夢があった。今の若者は、このホンコンドリームを見ることもできない。海外に移住する資産を持たない市民と若者は必死の抵抗を繰り広げている。
3.香港の存在意義
  1.  中国のGDPにおける香港のシェアーは返還時の25%に比べて5%まで低下している。
    しかし、金融センターとしての機能は衰へておらず、特に外貨ともいえる”香港ドル”の利用価値が大きい。”人民元→マカオのギャンブルでパカタに交換→香港ドルへ交換”のルートはマネーロンダリングや海外への資産移しに利用されている。
4.諸外国の反応
  1. ①米英は当初から一貫して、市民、若者の活動を支持し、中共政府の武力による鎮圧をけん制してきた。さらに、米国は上下院で「香港人権・民主主義法案」を可決し、11月27日にはトランプ大統領もこれに署名して法案は成立した。
    独仏などの欧州各国、アジア各国も総じて、香港市民に熱い声援を送っている。
  2. ②中共政府によるウィグル民族への極悪非道な圧政が次第に明らかになっている。各国の報道は、ウィグル、香港を合わせて中共政府の人権弾圧を糾弾する論調となっている。
  3. ③台湾のマスコミは、すでに中共のコントロール下にあるといわれている。しかし、CNNなど海外メディアからのニュースは入っており、台湾市民の関心は高い。来年1月の台湾総統選挙への影響が注目されている。
  4. ④日本のマスコミは、中共政府に忖度してか、当初はほとんど報じていなかった。最近はやむなくか、動乱の状況を報じるようにはなったが、きわめて冷たい、手短な報道で、市民や若者の民主化運動を支援、支持するような報道は一切ない。
    また、政治家、人権擁護派知識人などからも香港支援の発信はほとんどない。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧